認知症の中核症状:実行機能障害とは?家族が知っておくべき対応方法
こんにちは、介護主任のみしょです。
認知症の中核症状のひとつに「実行機能障害」があります。
これは、計画を立てたり、順序立てて行動したりする力が低下する症状で、日常生活の中で大きな影響を及ぼします。
家族からすると「なんでこんな簡単なことができなくなったの?」と感じやすく、誤解や戸惑いが生まれやすい部分です。
この記事では、介護主任として現場で数多くの事例を見てきた経験をもとに、
実行機能障害の特徴・原因・家族ができる具体的な対応方法を詳しく解説します。
実行機能障害とは?
「実行機能」とは、人が生活を送るうえで必要な計画・判断・順序・行動のコントロール能力のことです。
この力が低下すると、何かを「やろう」と思っても、うまく段取りを立てられずに途中で止まってしまいます。
つまり、頭では理解していても「行動を順序立てて最後まで実行する」ことが難しくなるのです。
認知症の方にとっては、ごく当たり前の家事や支度でさえ、複雑な課題になってしまいます。
具体的な例
- 料理をしようとして、材料を出したまま火をつけ忘れる
- 掃除を始めても途中で他の作業に移ってしまい、終わらない
- 買い物に行ったのに、必要な物を買い忘れて帰る
- 服の順番を間違えて、下着の上にズボンをはこうとする
これらはすべて、「やりたい気持ちはあるけれど、行動の流れを組み立てられない」という脳の障害によって起こります。
なぜ実行機能障害が起こるのか?
脳の中でも特に前頭葉は、物事の計画や行動のコントロールを司る部分です。
この前頭葉が萎縮・障害されることで、行動を順序立てて考える力が低下します。
また、アルツハイマー型認知症だけでなく、血管性認知症や前頭側頭型認知症(ピック病)などでも、実行機能障害はよく見られます。
つまり、どのタイプの認知症でも「生活の流れがつかめない」「段取りが難しくなる」といった症状が共通して起こりやすいのです。
特に前頭葉が関わるため、人格や感情のコントロールにも影響が出ることがあり、
「急に怒りっぽくなった」「同じことを何度も繰り返す」といった行動が見られるケースもあります。
家族が感じやすい戸惑いと誤解
実行機能障害は見た目では分かりにくいため、家族が誤解しやすい症状でもあります。
「怠けている」「やる気がない」「サボっている」と感じてしまうのも無理はありません。
しかし、実際には脳の障害によって「できなくなっている」状態であり、本人に悪意はありません。
特に、これまで几帳面だった人ができなくなると、家族のショックも大きいものです。
私の現場でもよくあるのが、
「掃除を頼んだら、途中でテレビを見始めて終わっていなかった」
「お茶を入れる途中で、急に他の部屋に行ってしまった」など。
こうしたとき、叱ったり、何度もやり直させたりすると、本人はますます混乱して自信を失う結果になります。
実行機能障害への具体的な対応方法
理解と対応のポイントを押さえるだけで、本人も家族もストレスを大きく減らすことができます。
介護主任として、現場で効果のあった対応方法を紹介します。
① 手順を細かく区切って伝える
「料理をして」「掃除して」という大きな指示は理解が難しくなります。
代わりに「まずお皿を出して」「次にご飯をよそって」といったように、ひとつずつ順番に伝えることが大切です。
② 視覚的なサポートを活用する
言葉の理解が難しい場合は、メモや写真、ラベルなどを使うのも効果的です。
「歯ブラシ」「薬」「カレンダー」など、見える形でのサポートは混乱を減らします。
③ 一度に一つのことをお願いする
複数の指示は混乱のもとです。
「これをしたら次はこれ」と順序を明確にし、ひとつずつ完結させるようにしましょう。
④ 否定ではなく共感で支える
「なんでできないの!」と叱るのではなく、
「一緒にやろうか」「ここまでできたね」と肯定的な声かけを。
安心感があることで、本人も落ち着いて行動できます。
⑤ 完璧を求めない
以前のように完璧にできなくても大丈夫です。
少しの手助けで「できた」という成功体験を感じてもらうことが、自信と尊厳を守ることにつながります。
実行機能障害と安全管理
実行機能が低下すると、「火の消し忘れ」「薬の飲み忘れ」「ガスの締め忘れ」など、命に関わるリスクが生じます。
家族の目が届かない時間をどう確保するかも大切な課題です。
その際におすすめなのが、デイサービスの利用や見守り機器の導入です。
「安全な環境を整える」ことは、本人の尊厳を守ることでもあります。
まとめ:支えるのは「行動」ではなく「心」
実行機能障害は、認知症の中でも生活に大きな影響を与える症状です。
しかし、本人にとっては「できないこと」ではなく、「どうしてうまくいかないのか分からない」という混乱の連続でもあります。
家族が焦らず、一緒に行動を組み立てていく姿勢が、本人の安心と尊厳を支えます。
完璧を求めず、本人が少しでも「自分でできた」と感じられる環境を整えることが、最も大切な支援です。
認知症介護の本質は「何をさせるか」よりも、「どう寄り添うか」。
それを忘れずに、一歩ずつ穏やかな日常を築いていきましょう。
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