理解・判断力の低下(実行機能障害)とは?生活での工夫ポイント
こんにちは、介護主任のみしょです。
今回は、認知症の中核症状のひとつである「理解・判断力の低下(実行機能障害)」についてお話しします。
この症状は、物忘れのように「覚えていない」という単純なものではなく、理解・判断・段取りなど“考えて動く力”が落ちていく状態を指します。
一見するとただの不注意やぼんやりに見えることも多く、家族が「なんでこんなこともできなくなったの?」と戸惑う原因にもなります。
しかし、この理解・判断力の低下は、本人の努力や気持ちの問題ではありません。
脳の機能が変化していることで起こる、れっきとした認知症の中核症状です。
理解・判断力の低下(実行機能障害)とは?
認知症が進行すると、脳の前頭葉や側頭葉といった「考える・判断する」部分の働きが弱くなります。
その結果、情報を理解したり、順序立てて行動したりする能力が低下します。これを実行機能障害(executive dysfunction)と呼びます。
簡単に言えば、「次に何をすればいいかが分からなくなる」という状態です。
たとえば、料理をしようと思っても、材料を出して、切って、火を使って…という一連の流れが組み立てられず、途中で止まってしまう。
また、買い物に行っても「今、何を買いに来たのか」を思い出せず、必要なものを選べない。
こうした「段取りの組み立て」や「判断の積み重ね」が難しくなるのが、この障害の特徴です。
物忘れとの違い
物忘れとの大きな違いは、「覚えていない」だけでなく「考えて判断する力」そのものが落ちているという点です。
- 物忘れ:情報を記憶・保持できない(例:昨日の夕食を思い出せない)
- 理解・判断力の低下:情報を整理・理解できない(例:料理の手順が分からない)
つまり、単なる記憶の問題ではなく、思考や行動の“流れ”そのものが崩れてしまうのです。
この違いを理解しておくと、家族が「なんで分からないの?」と責める場面を減らすことができます。
具体的な症状の例
現場でよく見られる実行機能障害の例を挙げます。
- 料理中に次の手順を忘れ、途中で手が止まる
- 掃除をしていても、別のことに気を取られて中断してしまう
- お金の計算ができず、レジで混乱する
- ガスを消し忘れたり、水道を出しっぱなしにする
- 話を理解できず、質問に答えられない
- 複数の指示を受けると混乱して動けなくなる
これらは決して怠けているわけではなく、「脳が手順を整理できない」ために起こる自然な症状です。
家族にとっての戸惑いと対応のコツ
介護現場でも、家族から「前はできていたのに」「何度言っても分かってくれない」といった声をよく聞きます。
しかし、理解・判断力が低下している状態では、「言えば分かる」「注意すれば直る」というものではありません。
大切なのは、本人を責めるのではなく、環境や伝え方を工夫することです。
一つずつ順序を区切って伝えることで、混乱を防ぎ、できることを維持できます。
家族ができる生活の工夫
理解・判断力の低下がある方にとって、環境は非常に重要です。以下のような工夫をすることで、本人の「できる力」を支え、家族の負担も減らせます。
- ① 選択肢を減らす
洋服や食器などは「これとこれ」だけに絞り、迷う要素を減らします。 - ② 視覚的に分かりやすくする
ラベルや写真を貼るなど、言葉ではなく「見て分かる」工夫を。 - ③ 一度に1つずつ伝える
「お風呂に入って」「そのあと歯を磨いて」ではなく、「まずお風呂に入りましょう」と順序を分けます。 - ④ 失敗を責めない
できないことより、できたことを褒めて安心感を持たせることが大切です。 - ⑤ 環境をシンプルにする
物を減らし、必要な物だけを手の届く場所に。整理整頓は「安心」につながります。 - ⑥ 日課・ルーティンを作る
決まった時間に同じ流れを繰り返すことで、理解や判断の負担を減らします。
これらの小さな工夫が、本人の混乱を防ぎ、「穏やかな日常」を支える大きな力になります。
専門職と連携する重要性
家族の工夫だけでは限界があります。
理解・判断力の低下が進むと、金銭管理・服薬管理・火の扱いなどに危険が伴うこともあります。
そのため、ケアマネジャーに相談して、デイサービスや訪問介護などの支援を組み合わせることが大切です。
特にデイサービスでは、レクリエーションや軽いリハビリを通して判断力を刺激し、「できることを維持する」サポートができます。
また、福祉用具専門相談員や作業療法士の意見を取り入れることで、環境調整もより安全・快適にできます。
介護主任として伝えたいこと
私は介護主任として、日々多くの認知症の方と関わっています。
理解・判断力の低下がある方に共通して言えるのは、「できない自分に気づいて苦しんでいる」ということです。
本人は、頭の中で「こうしたい」と思っていても、うまく体が動かない・順番が分からない。
その「できないもどかしさ」が不安や怒りとなって現れることがあります。
だからこそ、家族が「何も分からなくなった」と悲観するよりも、“どうすれば安心して過ごせるか”を一緒に考えてあげることが大切です。
できる部分を少しでも活かせば、本人も家族もずっと穏やかに暮らせます。
そのためには、支える側が焦らず、環境を整える視点を持つことが何より重要です。
まとめ
理解・判断力の低下(実行機能障害)は、認知症の進行に伴って誰にでも起こりうる症状です。
しかし、環境の工夫や専門職のサポートで、「その人らしい生活」を守ることが可能です。
- 選択肢を減らして混乱を防ぐ
- 視覚的にわかりやすい環境を作る
- 一度に1つずつ指示を出す
- できることを褒めて安心感を与える
- 専門職に相談し、支援を組み合わせる
小さな工夫が、本人の「できる力」を長く保つことにつながります。
焦らず、怒らず、笑顔で寄り添う――それが何よりの支援です。
この記事が、認知症の理解や介護のヒントになれば嬉しいです。
© 介護あるある・みしょの介護記録

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