見当識障害とは?症状の進み方と日常での関わり方<

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見当識障害とは?症状の進み方と日常での関わり方

こんにちは、介護主任のみしょです。
認知症の中核症状のひとつに見当識障害(けんとうしきしょうがい)があります。
これは、「今がいつなのか」「ここがどこなのか」「目の前にいるのは誰なのか」といったことが分からなくなる症状で、日常生活の混乱を招きやすい特徴があります。

介護現場でも非常に多く見られる症状のひとつで、家族にとってもどう接すればよいのか分からないと感じる場面が多いでしょう。
この記事では、介護主任としての現場経験を交えながら、見当識障害の進み方・家族ができる対応・関わりのコツを詳しく解説します。


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見当識障害とは?

見当識とは、自分の置かれている状況を理解する力のことを指します。
たとえば、朝起きて「今日は何月何日か」「今自分は自宅にいる」「隣の人は家族だ」といったことを自然に認識して行動していますよね。
この「時間・場所・人物」を認識する力が低下するのが見当識障害です。

認知症による脳の変化により、情報の整理や記憶の照合が難しくなるため、本人の中で現実と記憶が混ざり合ってしまうことがあります。
たとえば、過去の記憶の中に今を重ね、「昔の自宅に帰らなければ」と思い込むケースもあります。


見当識障害の進行段階

見当識障害は、多くの場合「時間 → 場所 → 人物」の順に進行していきます。

  1. 時間の見当識障害
    日付や曜日、季節が分からなくなる段階です。
    「今日は何日?」「今は朝?夜?」というように時間の感覚が曖昧になります。
    初期段階では、「朝ごはんを食べたのに、まだ食べてないと思う」「夕方を朝と勘違いして外出しようとする」といった行動が見られます。
  2. 場所の見当識障害
    次第に、自宅や施設の中で迷うようになります。
    「ここはどこ?」「家に帰らなきゃ」と言って、実際には自宅にいても帰宅願望を訴えるケースが典型です。
    また、トイレや自分の部屋の場所が分からなくなり、生活上の混乱が増えていきます。
  3. 人物の見当識障害
    最も進行した段階では、家族や介護者の顔が分からなくなることがあります。
    「あなたは誰?」「母を呼んでほしい」といった言葉が出ることもあります。
    しかし、本人の中では過去の時間を生きているため、現在の家族の姿と記憶上のイメージが一致していないだけなのです。

このように段階的に進行していくため、早い段階で環境づくりと対応を整えることが大切です。


なぜ見当識障害が起こるのか?

見当識障害の主な原因は、脳の記憶や空間認識をつかさどる部分(海馬・側頭葉など)の機能低下です。
しかし、脳の変化だけでなく、環境や心理的要因も大きく影響します。

  • 入院・施設入所など、環境が変わった
  • 日中の活動量が減り、昼夜逆転している
  • ストレスや不安感が強い
  • 周囲が本人に分かるように説明していない

特に、認知症の方にとって「見慣れたもの」「安心できる声」「規則正しい生活」は、見当識を保つための大きな支えになります。


見当識障害が家族に与える影響

見当識障害が進むと、家族にとって精神的な負担も増えていきます。

「自宅なのに『家に帰りたい』と言われる」
「夫を父親と思い込み、話がかみ合わない」
「息子を“知らない人”だと思って怖がる」

このような状況は、介護している家族にとってとてもつらいものです。
しかし、本人は嘘をついているわけではなく、本気でそう感じているのです。

見当識障害による言動は、本人にとっての“現実”です。
それを無理に訂正しようとすると、不安や混乱を強めてしまうこともあります。


家族ができる関わり方

見当識障害のある方と接するときは、「安心」と「共感」を意識することが大切です。

  • カレンダーや時計を見やすい場所に設置する
    日付や曜日を確認できる工夫を。大きな文字のカレンダーやデジタル時計がおすすめです。
  • 季節感を取り入れる
    「今日は桜が咲いてるね」「もう年末だね」といった会話で、自然に季節や時間を伝えましょう。
  • 場所が分からないときは穏やかに案内する
    「ここはあなたの家ですよ」と否定するよりも、「トイレはこちらですよ」「ご自分の部屋はこっちですね」と行動を導く方がスムーズです。
  • 人物が分からなくても否定しない
    「誰だと思う?」ではなく、「私は〇〇ですよ」と優しく自己紹介することで、不安を軽減できます。
  • 安心できる空間を整える
    昔から使っていた家具や写真を飾ることで、本人が落ち着ける環境を作りましょう。
  • 生活リズムを一定に保つ
    起床・食事・入浴・就寝の時間をできるだけ毎日同じにすることで、混乱が減ります。

これらは一見小さな工夫ですが、積み重ねることでBPSD(行動・心理症状)の予防にもつながります。


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介護主任として伝えたいこと

現場では、見当識障害が進むことでトラブルや不安行動が増えることも少なくありません。
「帰宅願望」「夜間の徘徊」「人物誤認」など、家族が心身ともに疲弊するケースもあります。

ですが、私が多くの現場で見てきたのは、“本人が悪いわけではない”という事実です。
周囲が寄り添うことで、穏やかに過ごせる時間は確実に増えていきます。

たとえば、「帰りたい」という訴えには、「どこに帰りたいの?」と優しく聞き返してみてください。
多くの場合、本人の心の中には「安心したい」「落ち着きたい」という願いがあります。
その気持ちを汲み取ることこそ、見当識障害との付き合いで最も大切なポイントです。


まとめ

見当識障害は、認知症が進むにつれて時間 → 場所 → 人物の順に現れることが多い症状です。
戸惑うことも多いですが、否定や訂正ではなく、安心できる環境と関わりによって、混乱を和らげることができます。

介護は家族だけで抱え込む必要はありません。
地域包括支援センターや医療・介護専門職に相談しながら、チームで支えていくことが大切です。

焦らず、ひとつひとつの変化に寄り添いながら、本人が「安心できる今」を感じられる支援を心がけましょう。


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