記憶障害とは?特徴と家族が知っておく対応方法
こんにちは、介護主任のみしょです。
認知症の中核症状のひとつである記憶障害。
「同じことを何度も聞かれる」「約束を忘れられる」「昨日のことを覚えていない」――そんな変化に戸惑うご家族は多いと思います。
しかし、これは本人の怠けや性格の問題ではなく、脳の働きそのものが変化していることが原因です。
今回は、介護主任の立場から、記憶障害の特徴・進行のしかた・家族ができる関わり方について、現場目線で詳しくお伝えします。
記憶障害とは?
記憶障害とは、「覚える力」や「思い出す力」が低下することを指します。
人間の記憶は、次の3つのステップで成り立っています。
- ① 記銘(きめい):新しい情報を頭に入れる
- ② 保持:覚えた情報を保つ
- ③ 想起:必要なときに思い出す
認知症になると、この流れのどこかが壊れてしまいます。
特に「記銘」=新しいことを覚える力が早い段階で落ちるため、数分前の出来事を覚えていられなくなります。
たとえば食事のあとに「もうご飯はまだ?」と聞いたり、来客のことをすぐ忘れたりするのは、この「記銘障害」によるものです。
認知症における記憶障害の特徴
認知症による記憶障害は、年齢による「もの忘れ」とは異なります。
その特徴を、介護現場でよく見られる事例とともに見ていきましょう。
- 近時記憶の障害:数分前の会話や食事内容を忘れてしまう
- 同じ質問を繰り返す:「今日は何曜日?」を何度も聞く
- 約束を忘れる:「病院へ行く予定だった」ことを覚えていない
- 物の置き忘れ・紛失:財布やメガネを探して部屋中を歩き回る
- 過去の記憶は比較的残る:若い頃の話は覚えている
つまり、新しい記憶から順番に失われていくのが特徴です。
これは「海馬」という脳の記憶をつかさどる部分がダメージを受けることで起こります。
もの忘れと記憶障害の違い
よく「年のせいかな」と軽く考えられがちですが、加齢によるもの忘れと認知症による記憶障害には明確な違いがあります。
| 項目 | 加齢によるもの忘れ | 認知症による記憶障害 |
|---|---|---|
| 忘れる内容 | 一部を忘れる(例:名前が出てこない) | 出来事自体を忘れる(食事したことを覚えていない) |
| 気づき方 | 本人が自覚している | 本人に自覚がない |
| 生活への影響 | ほとんど支障がない | 日常生活に支障をきたす |
このように、記憶障害は生活に直接影響を与えるレベルの忘れ方であることが特徴です。
記憶障害が家族に与える影響
現場でよく聞くのが、「何回言っても忘れる」「約束しても守られない」というご家族の悩みです。
とくに在宅介護では、何度も同じ対応を求められることでストレスや怒りを感じやすくなります。
しかし、本人に悪気はありません。
「さっき言ったでしょ」と叱ると、本人は“自分が責められた”という不安だけが残ることになります。
すると「どうせ私はダメなんだ」と気持ちが落ち込み、症状がさらに悪化してしまうこともあります。
大切なのは、本人が安心できる関わり方を意識することです。
家族ができる対応方法
① 否定せず、穏やかに答える
「さっき言ったでしょ」「もう聞いたよ」は禁句です。
本人にとっては「初めて聞いた話」だからです。
繰り返される質問には、根気よく優しく答えることが信頼関係の維持につながります。
② メモやカレンダーを活用する
予定や大切なことは「見える化」しましょう。
ホワイトボードに「今日はデイサービス」「15時:おやつ」などと書くだけでも、安心感が生まれます。
本人が自分で確認できる仕組みを整えるのがポイントです。
③ 環境を整理して物の置き場所を決める
記憶障害のある方にとって、環境の乱れは混乱を招きます。
「財布はここ」「眼鏡はこの棚」など、置き場所を固定しておくと探し回るストレスを減らせます。
④ 会話の中で“きっかけ”を作る
過去の記憶は比較的残りやすいため、昔話をきっかけに会話を広げるのもおすすめです。
「昔、家族で旅行に行ったね」「あの頃よく作ってくれた料理覚えてる?」など、ポジティブな感情を刺激すると安定しやすくなります。
⑤ 医療・介護サービスを活用する
家族だけで抱え込むと、必ず限界がきます。
ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、デイサービス・訪問介護・ショートステイなどを組み合わせて負担を減らしましょう。
医師による薬物治療(抗認知症薬)で症状が落ち着く場合もあります。
介護主任として伝えたいこと
私はこれまで、記憶障害のある多くの利用者さんと関わってきました。
どの方にも共通して感じるのは、「忘れてしまうこと」への不安や恥ずかしさです。
何度も同じ質問をしている自分を責める方もいます。
だからこそ、私たち介護職や家族ができる最大のサポートは、「安心して間違えられる環境をつくること」です。
忘れても、また思い出せばいい。
その繰り返しの中で、本人が穏やかに過ごせるよう支えていくことが何より大切です。
まとめ
認知症の記憶障害は、本人の努力不足ではなく脳の変化によるものです。
責めたり否定したりするよりも、環境調整と優しい言葉がけが支えになります。
そして、家族も「完璧な対応をしよう」と無理をしないこと。
困ったときは、専門職や地域のサービスを上手に頼りましょう。
介護は一人で頑張るものではありません。
「忘れること」を責めず、「今日も笑顔で過ごせたね」と言える日々を積み重ねていきましょう。

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