認知症の中核症状「記憶障害」とは?特徴と家族が知っておきたい対応方法

● 介護の始め方

認知症の中核症状「記憶障害」とは?特徴と家族が知っておきたい対応方法

こんにちは、介護主任のみしょです。
認知症で最も多くみられる症状のひとつが「記憶障害」です。
「同じことを何度も聞く」「さっき食べたことを忘れる」「財布をなくしたと騒ぐ」など、家族が戸惑いやすい症状でもあります。

今回は、介護現場に20年近く携わってきた私の経験も踏まえ、記憶障害の特徴・進行・家族ができる関わり方を詳しく解説します。
「どうして何度も聞くの?」「怒ってはいけないの?」と悩むご家族にこそ、ぜひ読んでいただきたい内容です。


記憶障害とは?

記憶障害とは、これまでの記憶や新しい出来事を覚えておく力が低下する症状のことです。
認知症における記憶障害は、脳の「海馬」と呼ばれる部分がダメージを受けることで起こります。
そのため、「昨日のこと」は忘れても、「若い頃の記憶」は比較的残る傾向があります。

家族が最初に気づくことが多いのは、次のような行動です。

  • 「ご飯食べた?」と何度も聞く
  • 同じ話を何回も繰り返す
  • 買い物に行っても何を買うか忘れる
  • 人の名前や約束を思い出せない
  • 財布や通帳をどこに置いたか忘れて探し回る

このような行動を見て「怠けている」「ぼんやりしてる」と感じてしまう方もいますが、実際には本人の意思ではコントロールできない脳の症状です。
認知症の中核症状のひとつとして、ほとんどの方に見られるものです。


記憶障害の3つの段階

記憶障害と一言でいっても、進行段階によって特徴が異なります。
ここでは、介護の現場でよく見られる3段階を紹介します。

① 初期:新しいことを覚えられない

もっとも早く見られるのが「近時記憶の低下」です。
たとえば、数分前に話した内容を忘れたり、今日の予定が思い出せなかったりします。
「さっき話したばかりなのに…」という状況が何度も起きます。

家族にとってはストレスを感じやすい時期ですが、本人は忘れている自覚があることも多く、強い不安や焦りを抱えています。
そのため、「忘れてるでしょ」「何回も言ったよ」と指摘すると、プライドが傷つき、感情的になることもあります。

② 中期:過去の記憶があいまいになる

徐々に「昔の記憶」も曖昧になってきます。
自分の子どもを「兄弟」や「同級生」と思い込むこともあり、家族の方がショックを受ける場面も少なくありません。

また、体験そのものを忘れてしまうため、「ご飯を食べていない」と主張したり、「お金を盗まれた」と思い込むなど、誤解や被害感が生まれることもあります。
この段階では、安心感を与える声かけと、穏やかな環境づくりがより重要になります。

③ 進行期:体験の記憶が抜け落ちる

重度になると、「朝起きた」「お風呂に入った」といった日常の出来事そのものを覚えていられなくなります。
本人の中では、時間の流れが途切れ途切れになっており、今この瞬間の出来事がすぐにリセットされる状態になります。

そのため、周囲がどんなに説明しても理解できず、「何もわからないまま不安な時間を過ごす」ことになります。
ここまで進むと、家族だけでの対応は限界があるため、介護サービスの活用が不可欠です。



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家族ができる対応の工夫

記憶障害に対してもっとも大切なのは、「忘れることを責めない」「不安を和らげる」という姿勢です。
介護現場で私が実践してきた対応法を紹介します。

  • ① 否定せずに答える:
    何度も同じ質問をされても、怒らずに「そうだね」「大丈夫だよ」と穏やかに返しましょう。
    否定されると、本人は「自分が悪い」と感じて落ち込み、かえって混乱が強まります。
  • ② メモやカレンダーで“見える化”:
    冷蔵庫に予定を書いたり、写真付きのメモを貼っておくことで、本人の安心感が高まります。
    「視覚から確認できる安心感」は、介護現場でも非常に有効な方法です。
  • ③ 写真やアルバムで記憶を刺激:
    過去の写真を一緒に見ながら話すことで、「エピソード記憶」が活性化します。
    昔の記憶は残りやすいため、懐かしい話題を通して笑顔が生まれることもあります。
  • ④ 予定をルーティン化:
    「毎日同じ時間に食事・散歩・お風呂」を繰り返すことで、時間の感覚を維持しやすくなります。
    新しい変化が多いほど混乱するため、安定した生活リズムが大切です。
  • ⑤ 優しい声かけを心がける:
    「大丈夫だよ」「一緒にやろう」など、安心できる言葉を繰り返すだけでも穏やかになります。
    言葉の内容よりも、声のトーンや表情のやさしさが心を落ち着かせます。

介護主任として伝えたい現場のリアル

記憶障害のある方と接していると、「どうしてこんなに忘れてしまうのか」「もう私のことを覚えていないのか」と、家族が深く傷つく場面が本当に多いです。
しかし、私が長年関わってきた中で感じるのは、“心の記憶”は最後まで残るということです。

たとえ名前を忘れても、
声のトーン、手の温もり、優しく話しかけてくれた人の印象はしっかり残っています。
そのため、穏やかに関わること自体が最高の介護なのです。

一方で、記憶障害が進むと、介護者の負担も確実に増えます。
「一晩中同じ質問をされる」「家を出て行こうとする」など、心身の疲労は限界に達することもあります。
そんなときは、「休む勇気」も立派な介護です。



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専門職や介護サービスを頼るタイミング

「自分たちだけでなんとかしなきゃ」と頑張りすぎるご家族が多いですが、記憶障害が進むと在宅介護だけでは限界があります。
次のようなサインが出たら、早めに専門職へ相談しましょう。

  • 一人で外出して迷子になることが増えた
  • 火やガスの消し忘れが目立つ
  • 夜間の徘徊や昼夜逆転が続く
  • 服薬・食事・排泄の管理が難しくなった

これらはすべて、「安全な生活を維持するのが難しい状態」のサインです。
ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談し、デイサービス・ショートステイ・介護施設などの利用を検討しましょう。


まとめ

記憶障害は、認知症の最初期から現れる中核症状のひとつです。
「忘れる」のは本人のせいではなく、病気による脳の機能低下です。
だからこそ、家族が怒らず、安心できる環境を整えることが大切です。

介護主任として現場で多くのご家族を見てきましたが、一番大切なのは「支える側が追い詰められないこと」です。
一人で抱え込まず、専門職や介護サービスをうまく利用して、
本人と家族の「笑顔が続く介護」を目指していきましょう。

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