血管性認知症とは?特徴とアルツハイマーとの違いを介護主任が解説
こんにちは、介護主任のみしょです。
介護の現場では、「認知症にも種類があるんですよね?」「血管性とアルツハイマーってどう違うの?」という質問をよくいただきます。
実際、同じ“認知症”でも、その原因や進行の仕方、ケアのコツは大きく異なります。
今回は、現場の経験をもとに血管性認知症の特徴・アルツハイマー型との違い・家族ができる関わり方を、できるだけわかりやすく解説していきます。
血管性認知症とは?
血管性認知症は、その名の通り「脳の血管」が関係して起こる認知症です。
脳梗塞や脳出血などによって脳の一部に血流障害が生じ、酸素や栄養が届かなくなった部分の脳細胞がダメージを受けます。
その結果、記憶・判断力・感情のコントロールなど、脳の働きに影響が出るのがこのタイプです。
一般的に、発症の原因となるのは以下のようなものです:
- 脳梗塞(血管が詰まる)
- 脳出血(血管が破れる)
- 小さな梗塞が複数起きて、少しずつダメージが重なる(多発性脳梗塞)
つまり、血管性認知症は「脳の血流トラブル」が引き金になって起こる認知症なのです。
アルツハイマー型のように「脳の中に異常なたんぱく質がたまる」のとは、原因がまったく異なります。
進行の特徴:階段を下りるように変化する
アルツハイマー型が“ゆるやかに進行する”のに対して、血管性認知症は「階段状」に悪化するのが特徴です。
ある日を境に急に症状が悪化したり、「前の発作からしばらく安定していたのに、また悪くなった」というケースが多く見られます。
これは、脳の血管に新たな障害(再発)が起きるたびに、脳の働きが少しずつ低下していくためです。
そのため、日によって調子が違う、機嫌の波が激しいといった変化も起こりやすくなります。
アルツハイマー型認知症との違い
どちらも“認知症”ではありますが、原因・症状・進行の仕方・関わり方が異なります。
下の表で整理してみましょう。
| 比較項目 | 血管性認知症 | アルツハイマー型認知症 |
|---|---|---|
| 原因 | 脳梗塞や脳出血など脳血管障害による | 脳にアミロイドβなどの異常たんぱく質が蓄積 |
| 進行の仕方 | 階段状(発作ごとに急に悪化) | ゆるやかに少しずつ進行 |
| 初期に出やすい症状 | 注意力・判断力の低下、感情の起伏、計画性の低下 | 記憶障害(物忘れ、同じ質問の繰り返し) |
| 感情の特徴 | イライラ・落ち込み・感情の波が強い | 穏やかだが徐々に意欲が低下していく |
| 再発リスク | あり(脳血管障害が再度起きることがある) | 再発ではなく徐々に進むタイプ |
つまり、アルツハイマー型が「ゆっくりと忘れていく病気」であるのに対し、血管性認知症は「脳のダメージによって突然進行する病気」と言えます。
現場でよくあるケース
たとえば、食事や入浴などの日常動作はできていたのに、ある日突然できなくなった。
あるいは、昨日までは普通に話していたのに、今日は反応が鈍く混乱している。
そんな急な変化が見られる場合は、血管性認知症の可能性を考える必要があります。
血管性認知症の主な症状
- 注意力・判断力の低下:段取りが苦手になる、複数の作業が難しくなる
- 感情の起伏が激しい:イライラ、怒りっぽい、急に泣くなど
- 集中力の低下:長時間の会話やテレビ視聴が続かない
- 歩行の変化:足が出にくい、ふらつきが増える(脳のダメージ部位による)
- 記憶障害:アルツハイマーほど強くはないが、徐々に進行することも
脳のどの部分がダメージを受けたかによって症状の出方が異なるため、「血管性認知症=こうなる」とは一概に言えません。
逆に言えば、その人に合わせた支援がとても大切になるタイプです。
家族が気づきやすいサイン
- ある日を境に、急に物忘れや混乱が進んだ
- 気分の波が激しく、怒ったり泣いたりすることが増えた
- できていた料理・買い物・掃除などの段取りができなくなった
- 歩き方が変わった、転倒が増えた
- 病院の通院を嫌がる、薬を忘れることが増えた
「急に変わった」「昨日と様子が違う」と感じたら、すぐに受診を。
新しい脳梗塞や血管障害が起きていることもあります。
小さな変化の“気づき”が、ご本人の命を守ることにもつながります。
治療とケアの基本
血管性認知症は、進行を完全に止めることは難しいものの、再発を防ぎ、悪化を遅らせることは可能です。
医療面での治療
- 血圧・血糖・コレステロールのコントロール
- 脳梗塞の再発予防薬(抗血小板薬など)
- 禁煙・節酒・運動習慣の改善
生活・介護面での支援
- できることを続けてもらう:過剰な介助は意欲を下げる
- 環境をシンプルに保つ:混乱を防ぐため、物の位置を固定
- 感情の波に寄り添う:「落ち着いたら話そうね」と柔らかく対応
- 地域包括支援センターへ相談:介護サービス・福祉用具の利用を検討
介護主任として伝えたい「関わり方のコツ」
血管性認知症の方は、感情のコントロールが難しくなることがあります。
「昨日は穏やかだったのに、今日は怒りっぽい」など、家族にとって戸惑う場面も少なくありません。
そんな時に大切なのは、“事実よりも安心”を優先することです。
- 間違いを指摘するより、「そう感じたんだね」と共感する
- できなくなったことを責めず、「一緒にやろう」と声をかける
- 本人の得意な作業(洗濯物たたみ、植物の水やりなど)を活かす
本人の「できること」を見つけて、それを生活リハビリとして取り入れると、意欲が戻りやすくなります。
介護現場でも、血管性認知症の方は支え方ひとつで驚くほど変わることがあります。
まとめ
血管性認知症は、脳の血管障害によって発症し、症状が階段状に進行するタイプの認知症です。
アルツハイマー型のように徐々に忘れていくのではなく、発作ごとにできないことが増えていくのが特徴です。
家族としては、生活習慣病の予防・再発防止・そして本人の自立支援が大切。
「昨日より少しできた」「今日は笑顔が見られた」——そんな小さな変化を積み重ねることが、介護の力になります。
無理をせず、困った時は地域包括支援センターや専門職に相談してください。
認知症ケアは一人で抱え込まないことが、いちばんのポイントです。

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