認知症のBPSD「抑うつ・不安・興奮」への対応方法|介護主任が解説

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認知症のBPSD「抑うつ・不安・興奮」への対応方法|介護主任が解説

こんにちは、介護歴20年・現役の介護主任をしているみしょです。
認知症の方に見られるBPSD(行動・心理症状)の中でも「抑うつ」「不安」「興奮」は、家族や介護職にとって非常に大きな負担になる症状です。
実際の現場でも、「急に泣くようになった」「落ち着かない」「夜中に興奮して暴言を吐く」といった相談は少なくありません。
この記事では、認知症の抑うつ・不安・興奮がなぜ起こるのか、そしてどのように関わればいいのかを、介護主任としての現場経験をもとに詳しく解説します。


■ 抑うつ・不安・興奮とは?

認知症の方は、記憶障害や理解力の低下により「自分が今どこにいるのか」「誰といるのか」が分からなくなります。
その混乱や不安が続くことで、抑うつ状態や興奮といった心理的な症状が現れることがあります。

  • 抑うつ:気分が落ち込み、意欲がなくなり、涙を流すことが増える。食欲や睡眠にも影響する。
  • 不安:「家に帰らなきゃ」「財布がない」「家族が来ない」など、現実にはない心配を繰り返す。
  • 興奮:些細なきっかけで怒ったり、大声を出したり、時に暴言・暴力行動へとつながる。

これらは“性格が変わった”のではなく、脳の働きの変化による症状です。周囲が「落ち着いて」と言っても、本人は抑えられません。
だからこそ、環境や対応の工夫が非常に大切になります。


■ なぜ起こるのか?原因を理解する

「抑うつ・不安・興奮」は、単一の原因ではなく、複数の要因が重なって起こります。現場では以下の4つの視点から観察することがポイントです。

① 環境の変化

入院や施設入居、引っ越しなどで環境が変わると、不安が強くなり抑うつや興奮が出やすくなります。
慣れた空間や人とのつながりが途絶えることで、本人の「安心の土台」が揺らいでしまうのです。

② 身体的不調

便秘、脱水、痛み、睡眠不足、感染症なども、気分の変化や不安・興奮の原因になります。
介護現場では「イライラしている=性格」ではなく、まず体の不調を疑うことが鉄則です。

③ 薬の副作用

睡眠薬や抗不安薬、降圧薬などの副作用によって、日中の眠気や夜間の覚醒、情緒不安定が出る場合もあります。
薬を服用している場合は、医師や薬剤師に相談しましょう。

④ 記憶障害による不安

「財布がない」「家に帰らなきゃ」などの訴えは、記憶障害によるものが多いです。
本人にとっては本気の不安であり、現実ではなくても本人の中では“今、起きていること”なのです。


■ 対応方法|介護主任の現場視点

1. 環境を整える

落ち着かない行動の背景には、「安心できない空間」があります。
静かで照明が柔らかく、慣れた写真や服がある空間は、本人の安心につながります。
特に入居直後は、自宅にあった物(掛け時計・カレンダー・好きなぬいぐるみなど)を置くだけでも効果があります。

2. 否定せず共感する

「そんなことないよ」「違うでしょ」と否定してしまうと、本人の不安はさらに強まります。
「そうだね」「心配なんだね」「一緒に探してみようか」と共感的な言葉をかけることで、感情の高ぶりを和らげられます。

3. 一度に多く話さない

理解力が低下している方に対して、長い説明は混乱を招きます。
一文を短く、ゆっくりと、目を見て伝えましょう。
介護現場では「1回で伝えようとしない」「必要なら繰り返す」ことが基本です。

4. 生活リズムを整える

昼間に少しでも体を動かすことで、夜間の落ち着きにつながります。
デイサービスの利用や散歩、音楽活動などは、抑うつや不安にとても良い影響があります。
特に音楽療法や回想法(昔の話をする)は、感情の安定に役立ちます。

5. 医療のサポートを活用する

どうしても興奮や抑うつが強い場合は、医療機関への相談が必要です。
抗不安薬や抗うつ薬などを適切に使うことで、穏やかに過ごせる時間が増えることもあります。
ただし、薬に頼りすぎず、生活リズムと環境改善も併用することが重要です。


■ 家族ができる具体的な工夫

  • 「予定表」や「時計」を見やすくして、時間の見通しをつけやすくする
  • 「誰が来る」「いつ食事」といった予定を伝えて不安を軽減する
  • 同じ質問をされても、穏やかな声で繰り返し対応する
  • 趣味・音楽・散歩など、気分転換できる時間をつくる
  • 介護者自身の休息も「介護の一部」として意識する

抑うつや不安は、本人だけでなく家族の気持ちにも影響します。
「自分の介護が悪いのでは?」と感じる必要はありません。症状は病気によるものです。
大切なのは、“寄り添う姿勢”を保ちながら、専門職やサービスをうまく頼ることです。


■ 家族・介護者の心のケアも忘れずに

不安や興奮が続くと、介護する側が限界を迎えてしまうこともあります。
夜眠れない、気分が落ち込む、イライラする――そんなときは、早めの相談が大切です。
誰かに話すことで気持ちが整理され、冷静な対応ができるようになります。

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■ 金銭管理や将来の備えも早めに

抑うつや不安のある方は、財布や通帳を手放さないケースも多く、金銭管理のトラブルが発生しがちです。
家族信託などを活用すれば、本人の意思を尊重しつつ安全にお金を管理することが可能です。

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■ まとめ

認知症の「抑うつ・不安・興奮」は、病気による脳の変化から起こる自然な反応です。
否定せずに受け止め、安心できる環境を整え、少しずつ穏やかな時間を増やしていくことが大切です。

介護する側も、自分自身を責めず、「頼れるものには頼る」ことを意識してください。
日々の小さな工夫と支援の積み重ねが、本人にも家族にも優しい介護につながります。
「共感」と「安心の共有」――それが、長く続けられる介護の第一歩です。

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