現場で見た“介護崩壊”の瞬間
特別養護老人ホーム 介護主任の私が伝えたいこと
目次
はじめに
「介護崩壊」――これは決してテレビやニュースの中だけの話ではありません。
私は特別養護老人ホームで介護主任として働く中で、何度も“崩壊の瞬間”を目の当たりにしてきました。
ご高齢のお母さんを支えるつもりで始めた介護。
けれど、気づけば家族全員が疲弊し、関係まで壊れてしまう。
そうなってしまう前に、ぜひ知っておいてほしい現場のリアルをお話しします。
一番印象に残っている「崩壊の瞬間」
ある日入所されたご高齢のお母さん。
娘さんがずっと自宅で介護をしていましたが、来所時には疲れ果てた表情でこう話しました。
「夜中も起こされて寝られないんです。ごはんも食べてくれなくて…もうどうしていいか分からなくて…」
介護が始まった当初は、「私が何とかする」と強い気持ちを持っていたそうです。
けれど、昼夜問わず続く介護、仕事との両立、周囲からの理解不足…。
次第に心も体もすり減り、最終的には限界を超えてしまったのです。
介護崩壊のサインとは?
現場で見ていて「このままでは危ないな」と感じるご家族には、共通のサインがあります。
- イライラが増え、表情が固くなる
- 施設職員への相談や連絡が極端に減る
- 「もう全部任せます」と丸投げになる
- 面会に来ても、会話が噛み合わない
これは責めるために書いているのではありません。
それだけ、介護は人を追い詰める力を持っているということです。
正直、介護は「楽しいことばかり」じゃない
よく「介護って大変でしょう?」と聞かれます。
正直に言うと、嬉しいことややりがいを感じる瞬間もたくさんあります。
でも、それ以上に辛いことの方が多いのも、また事実です。
家族だからこそ感情的になったり、
「もっと頑張らないと」と自分を追い詰めてしまったり。
介護が原因で家族関係がギクシャクするのも、珍しい話ではありません。
私が伝えたいのは「一人で抱え込まないで」ということ
介護崩壊は、「介護の知識がないから」ではありません。
“頼れる人がいない”“頼っちゃいけない”と思ってしまうから起きるのだと感じています。
地域には、
- ケアマネジャー
- デイサービス
- ショートステイ
など、一時的に介護の手を離す方法がいくつもあります。
介護保険をうまく活用すれば、負担を分散できるのです。
最後に
私はこう伝えたいです。
まずは、いろんな施設に見学に行ってみてください。
そして、「いざという時に頼れる場所」を作っておくことをお勧めします。
家族にしかできないこともあれば、
施設だからこそできることもあります。
定期的に面会に来ていただけると、
本人の安心感にもつながりますし、
ご家族にとっても「支えている実感」が持てるはずです。
介護は一人で抱え込まず、周囲とつながりながら進めていくもの。
そんな風に思ってもらえたら嬉しいです。
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