教えるのが苦手な先輩が実践している3つの工夫

こんにちは、介護福祉士のみしょです。
現場で「教えるのが苦手だ」と自分のことを言う先輩をよく見かけます。私自身も最初は教えるのが下手で、後輩にうまく伝えられずに悔しい思いをしたことが何度もありました。

「教え方が苦手」という自覚がある人の多くは、真面目で責任感が強いタイプです。完璧に説明しなければと思うあまり、結局何も言えなくなってしまう――そんな悪循環に陥りがちです。でも安心してください。完璧な教師である必要はありません。少しの工夫で、確実に伝わる先輩になれます。

教えるのが苦手になる“よくある理由”

まずは、「なぜ自分は教えるのが苦手なんだろう？」という疑問を整理してみましょう。自分の弱点が分かれば、対策も立てやすくなります。

• 言語化が苦手：普段は感覚でやっているため、言葉で説明するのが難しい。
• 失敗させたらどうしよう：新人のミスを恐れて指示が細かくなりすぎ、逆に混乱させる。
• 忙しさと時間のプレッシャー：手が空かないとじっくり教えられない。
• 完璧主義：自分のやり方でないと気が済まず、柔軟に教えられない。

これらの背景は致命的ではありません。むしろ「自分はこういう傾向がある」と理解しているだけで、改善の第一歩になります。

工夫①：まずは「見せる」だけにする（行動で伝える）

言葉で説明するのが苦手なら、いきなり長く説明しようとせず、「見せる」ことから始めましょう。介護は身体的な動作が多い仕事です。視覚で学ぶ方が早く身に付く場面がたくさんあります。

• 実演を短く区切る：一連の動作を全部見せるのではなく、「ここだけ見せる」「次にここだけ見せる」と区切ると理解が早い。
• 声かけは最小限に：「こうしてます」と一言添えるだけでOK。細かい説明は後で補足できます。
• 同じ動作を複数回見せる：一度で完璧に理解できる人は少ないので、時間があるときに繰り返し見せる習慣をつける。

実例：おむつ交換を教えるとき、まずは「位置取りだけ」「手の動かし方だけ」と分けて見せます。新人は全体をいきなりやらされると緊張してしまうので、短い区切りで覚えさせると安心です。

工夫②：「説明」をパターン化しておく（テンプレを作る）

説明が苦手な人におすすめなのが「パターン化」です。よくある場面ごとに、短い説明テンプレートを用意しておくと、自分の言葉で迷わず伝えられます。

• 手順テンプレ：「最初に〇〇、次に〇〇、最後に〇〇」などの決まり文句を用意する。
• 声かけテンプレ：利用者さんへの声かけ例（「〇〇さん、今からお風呂に入りますね、気分はどうですか？」）を用意する。
• 安全確認テンプレ：必ず確認するポイント（体位・呼吸・皮膚の状態など）を箇条書きで共有する。

具体例を一つ。移乗介助の説明テンプレ：

1. 「まずは利用者の足元に立つ」
2. 「手をお借りしますと言って、ベルトの位置を説明」
3. 「合図で一緒に立ち上がる」
4. 「安全確認して少しずつ移動」

このように短いフレーズにしておけば、その場で即座に伝えられます。紙に印刷して共有スペースに貼ると、新人だけでなく自分自身のメモにもなります。

工夫③：「質問しやすい空気」をつくる（心理安全を作る）

教える側が意識すべき最重要ポイントは、「質問しやすさ」です。新人が質問を躊躇してしまうと学びは止まってしまいます。雰囲気を変えるだけで、質問の数は劇的に増えます。

• 言葉がけを習慣化する：「いつでも聞いてね」「今のは分かった？」と定期的に声をかける。
• ミスを責めない：ミスは叱らず、「次はこうしたら良いよ」と改善点を具体的に示す。
• 自分の失敗談を話す：先輩も完璧ではないことを示すと、新人は安心して質問できる。
• 質問専用の時間を設ける：業務後に10分間のQ&Aタイムを設けるだけでも効果大。

心理的安全がある職場は、教える側も気持ちに余裕が生まれます。結果として短時間で効率よく教えられるようになります。

＋α：教えることで先輩自身も成長する

教える行為は、一方通行ではありません。教えることで先輩自身が自分の仕事を言語化し、見直す機会になります。「教える＝自分のスキルを確かめる作業」でもあるのです。

• 説明できない部分は自分の改善点：言葉にできない作業は、実は自分が曖昧にしている部分。
• 教える回数が増えると、手際がよくなる：反復することで動作が洗練される。
• チーム全体のレベルが上がる：教えることで新人が育ち、負担が分散される。

教えることを「義務」ではなく「自分のスキルを磨く機会」と捉えれば、気持ちが楽になります。

実践チェックリスト：今日から使える簡単ルール

以下のチェックリストをコピーして、日々の指導で使ってみてください。小さな習慣の積み重ねが、大きな違いを生みます。

• □ 実演は「1つずつ」短く区切って見せたか
• □ 説明テンプレ（手順・声かけ・安全確認）を用意しているか
• □ 今日1回は「聞いていい？」と声かけをしたか
• □ 自分の失敗談を1つ共有したか（新人が安心する）
• □ 教えた内容を簡単にメモしておき、次回の復習に使えるか

全部は無理でも、1つでも習慣化すると、教える負担がぐっと減ります。

よくある質問（Q&A）

Q. 教える時間が本当に取れないときはどうする？
A. 「見せる」→「任せる」→「振り返る」の流れを短縮して回してみてください。最初は必ず側で確認してあげることが重要です。

Q. パニックになりやすい新人にはどう対応する？
A. 指示を細かく分け、1つずつ終えたら褒める（短いフィードバック）を繰り返すと安心します。

Q. 自分の教え方で合わないと感じたら？
A. 他の先輩の教え方を観察して、良いところを取り入れてみましょう。真似から始めるのはとても有効です。

まとめ：苦手でも「伝わる先輩」になれる

教えるのが苦手な先輩に必要なのは、完璧さではなく「工夫」と「継続」です。今回紹介した3つの工夫——

• まずは「見せる」
• 説明を「パターン化」する
• 「質問しやすい空気」を作る

これらを少しずつ取り入れていけば、確実に伝わる先輩になれます。教えることは、あなた自身のスキルアップにもつながります。苦手だと感じる自分を責めず、一歩ずつ取り組んでいきましょう。

今日も現場で頑張っているあなたへ。あなたの「伝えたい」という気持ちは、必ず誰かの力になります。