「家族対応がつらい…」介護職が語る 面会家族とのギャップと心を守るコツ
施設で働いていると、利用者さんのケアだけでなく「面会に来られるご家族」とのやり取りが一番つらい、という声をよく聞きます。
「昨日は笑顔だったのに、今日は急に強い口調で言われた」「あの質問、責められているように感じた」——そんな経験、あなたにもありませんか?
私は介護主任として長年現場にいます。現場の疲れやストレスの大きな要因のひとつが、家族対応による感情的な消耗です。この記事では、現場の「本音」と、実務で使える具体的な対処法・心の守り方を、実例を交えて丁寧に解説します。読み終わったら少し気が楽になるはずです。
「家族の理想」と「現場の現実」は違う
面会に来るご家族は、その方の“普段の生活”や“苦労”をほとんど見ていません。多くの場合、面会は数十分〜1時間程度。その短い時間で「元気そう」と感じる一方で、職員は24時間の記録や夜間の対応、日々の微細な変化を把握しています。
ある家族は「今日は機嫌が良さそうだから、もう介護はいらないんじゃないか」と思うかもしれません。けれど職員は、直近の夜間の徘徊や食事量の低下、薬の副作用の兆候を日々チェックしています。ここに“見える差”が生まれ、誤解や不満につながるのです。
まず大事なのは、家族の視点は“短時間の断片”であると自分自身が理解すること。相手の言葉に即反応する前に、「この方は全体像を見ていないのだな」と一呼吸置くだけで、心のダメージが軽くなります。
つい「責められている」と感じてしまうときの対処法
面会中に投げかけられる言葉は、必ずしも職員を責める目的で出ているわけではありません。多くは“心配”や“不安”の表れです。
例えば:
- 「髪がボサボサですね」→ 親が見た目の変化に気づき不安になっている
- 「最近、食欲がないように見えます」→ 家では気づかない変化を職員に聞きたいだけ
まずできる対処は「受け止めて応答する」こと。例えばこんな受け答えが有効です。
「お気持ちよくわかります。最近は夜間の眠りが浅くて、朝の食べこぼしが増えています。今朝はこう対応しましたが、ご家族の方で気になる点はありますか?」
ポイントは「反論しない」「事実を端的に伝える」「家族の不安に共感を示す」ことです。これだけで相手は「聞いてもらえた」と感じ、ヒートアップを避けられることが多いです。
信頼関係は“正しさ”ではなく“共感”から築く
どんなに理路整然と説明しても、家族の感情が先に動いていると伝わりにくいです。私が何度も効果を見たのは「共感+観察の共有」です。
具体例:
- 「この前来られたときより笑顔が増えたように見えました」
- 「昨日は午後に少し元気が出て、リハビリの時間に参加されました」
こうした「ちょっとした良い変化」を伝えると、家族の安心感がグッと高まります。ポイントは“小さな事実”を見逃さず共有すること。家族は「ちゃんと見てくれている」と実感でき、それが信頼につながります。
感情的なやり取りを切り抜けるテクニック
どうしても感情が高ぶってしまう場面はあります。そういう時は次の3つのテクニックを試してください。
- 書面で伝える
口頭でのやり取りは感情的になりやすいです。状況をまとめた短いメモや記録を渡すことで、冷静なやり取りに変えられます。 - 第三者を挟む
ケアマネや看護師など、他職種に同席してもらう。第三者がいるだけで感情のエスカレーションを抑えられることが多いです。 - 時間を置く提案をする
「今は感情が高まっているように見えます。少し時間を置いて、改めてお話しませんか?」と提案することで、冷静な話し合いに誘導できます。
実際に私が関わったケースでは、夜間の出来事で家族が強い口調になったときに「まず今日はここまでの記録をお渡しして、明日ケアマネとも一緒に詳しくお話しませんか」と提案したことで、怒りがおさまり、建設的な話し合いへとつながった例があります。
日常的にできる“心の防御”とチームケア
家族対応による精神的負担をゼロにすることは不可能です。だからこそ、日々のルーチンで“ダメージを軽くする仕組み”を作ることが重要です。
- 申し送りテンプレートを作る:家族からよく聞かれる不安や質問に対する回答をテンプレ化しておくと、対応がスムーズになります。
- ミニ・デブリーフの実施:面会後に5分だけチームで情報共有と気持ちの確認をする時間を設けると、心理的負担が分散されます。
- 上長へのエスカレーション基準を明確にする:感情的になった家族対応は早めに上長や管理者に共有し、支援を仰ぎましょう。
私の職場では、夕方の申し送り時に「面会トラブルあったか?」の確認を必ず入れるようにしています。これだけで夜勤に入るスタッフの心構えが変わり、負担が軽くなるケースが多いです。
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個人的な体験:私が家族対応で学んだこと
ある日、認知症の利用者さんの娘さんが頻繁に来訪し、スタッフに厳しい言葉を投げかける場面が続きました。最初のうちは私も反発心を持ち、言い返したくなることがありましたが、次のアプローチで状況が変わりました。
まず、私がその娘さんとじっくり話す時間を設けました。話をよく聴くと、「仕事で親の様子を頻繁に見られない」「施設の方針に不安がある」という深い不安がありました。そこで私は日々の記録をまとめた簡単なレポートを作り、さらに週1回の短い面談を提案しました。すると娘さんの態度は徐々に柔らぎ、スタッフへの言い方も変わっていきました。
この経験から学んだのは、「説明」より「伴走」が効くということです。家族は“預ける不安”を持っている。その不安に寄り添い、少しずつ安心を積み上げることが信頼の第一歩になります。
心が折れそうなとき、まず試してほしいセルフケア
家族対応が続くと心身が消耗します。次のセルフケアを習慣化してみてください。
- 短い振り返りメモを残す:面会後に1分で「良かった点/気になった点」をメモすると、頭の中が整理されます。
- 仲間に共有する:信頼できる同僚に少し話すだけで気持ちが軽くなります(ただし職場のルールに沿って)。
- プロに相談する選択肢:長期間つらさが続く場合は、オンラインカウンセリングなど専門家の力を借りることも有効です。
必要なら外部リソースを使うのは恥ずかしいことではありません。むしろ「誰かに頼る判断」ができる人こそ、長く現場で活躍できる人です。
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長く続けるためのマインドセット
家族対応は介護職の一部であり、避けられない側面です。しかし次の心構えを持つと、精神的な負担はかなり軽くなります。
- すべてを完璧にしようとしない:職員の最優先は利用者の安全。その他の期待にすべて応えようとすると燃え尽きます。
- 小さな「勝ち」を積み重ねる:一度の面会で信頼を得るのは難しい。小さな安心を積み重ねる視点が大切です。
- 仲間を頼る:孤立すると感情がこもる。チームで支え合う文化を育てましょう。
最後に:あなたのケアは届いています
家族対応がつらい時期は本当に苦しいものです。でも覚えていてください——あなたの仕事は誰かの安心の“源”になっています。たとえ目に見えにくくても、記録や小さな気づき、日々のやりとりは必ず誰かの心を支えています。
今日はちょっとしんどいと感じるなら、それはサインです。休める方法を探して、周りに助けを求めてください。あなたが元気でいることが、利用者さんとその家族にとって一番の支えになります。
現場で頑張るあなたへ。無理をしすぎず、頼れるものは頼ってください。あなたのケアは、ちゃんと届いています。


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