BPSDでみられる「徘徊」とは?
〜認知症における特徴と介護の工夫〜
こんにちは、介護主任のみしょです。
今回はBPSD(認知症の行動・心理症状)の中でも、特に家族を悩ませる「徘徊」について解説します。
現場で20年近く関わる中で感じた、介護者としての視点や実際の対応の工夫も交えながらお伝えします。
■ 徘徊とはどんな症状か?
認知症の行動・心理症状(BPSD)のひとつに「徘徊」があります。
目的があるように見えても、途中で忘れてしまったり、時間や場所の感覚を失って帰れなくなったりするケースが多くあります。
「家に帰る」「会社へ行く」「子どもを迎えに行く」など、本人にとっては現実的で切実な理由が背景にあることも珍しくありません。
一見すると「勝手に出歩いている」ように見えるかもしれませんが、本人にとっては“必要な行動”です。
そのため、叱責や強い制止で止めようとすると、不安や混乱を増やしてしまうことがあります。
このような行動の背景には、認知機能の低下・不安・生活リズムの乱れ・過去の記憶の影響など、複数の要因が関わっています。
■ 徘徊が起こる主な原因
- 記憶障害: 目的や場所を忘れてしまい、途中で迷ってしまう。
- 見当識障害: 時間・場所・人物がわからなくなり、今いる場所を「自宅ではない」と感じてしまう。
- 不安やストレス: 落ち着かない気持ちを紛らわせるため、歩き回る行動に出る。
- 過去の生活習慣: 「仕事に行かないと」「子どもを迎えに行かなきゃ」と、過去の記憶に基づく行動を繰り返す。
- 環境変化: 入院・施設入所など、環境の変化による混乱で徘徊が始まることもあります。
現場では「夕方になるとソワソワして玄関へ向かう」「夜中に服を着替えて出かけようとする」などの場面をよく見かけます。
これは“日没症候群(サンダウン症候群)”と呼ばれ、時間の感覚が乱れることによって徘徊が増える傾向があります。
■ 徘徊がもたらすリスクと影響
徘徊には行方不明・転倒・交通事故などのリスクが伴います。
特に真冬や真夏は命に関わるケースもあり、家族にとって精神的負担が非常に大きい症状です。
一方で、歩くこと自体は運動・気分転換・体力維持にもつながるため、完全に「止める」ことが必ずしも良いとは限りません。
大切なのは、本人の安全を確保しながら“歩きたい気持ち”を尊重することです。
「徘徊=悪いこと」ではなく、
「徘徊=その人なりの理由がある行動」と捉えることが第一歩です。
■ 介護者ができる5つの対応方法
- 1. 安全対策を整える
玄関や窓にチャイムを設置し、外出時に音が鳴るようにする。
GPS機器や見守りタグ(例:MANOMA)を持たせることで、万が一外出しても早期発見が可能になります。 - 2. 日中の活動を充実させる
散歩や軽い体操、簡単な家事など、身体を動かす機会を意識的に増やしましょう。
体を動かすことで夜間の睡眠が安定し、徘徊の頻度が減るケースが多く見られます。 - 3. 安心できる環境をつくる
家の照明を明るく保ち、家具の配置を一定にしておくと混乱を防げます。
「ここは自分の家だ」と感じやすくなるよう、昔の写真や馴染みの家具を置くのも効果的です。 - 4. 本人の気持ちに共感する
「どこへ行くの!」と止めるより、「一緒に行きましょう」と寄り添う方が安心感を与えます。
否定ではなく共感の姿勢を持つことが、結果的に徘徊のエネルギーを和らげることにつながります。 - 5. 地域と連携して見守る
「認知症SOSネットワーク」や「地域包括支援センター」に登録しておくと、行方不明時にすぐ対応してもらえます。
家族だけで抱え込まず、地域全体で支える仕組みを活用しましょう。
■ 現場で感じる“徘徊対応の難しさ”
介護の現場では、「夜中に出て行こうとする」「靴を隠しても別の靴で出ようとする」など、徘徊への対応は非常に難しい部分です。
強く止めれば反発が生じ、放っておけば危険。
この板挟みの中で、家族も職員も悩みながら対応しているのが現実です。
私が現場で意識しているのは、“行動の意味を読み解く”ことです。
たとえば、「会社に行く」と言われた場合、実際に働くことを望んでいるわけではなく、
「昔の自分の役割を取り戻したい」「誰かの役に立ちたい」という想いが隠れていることがあります。
この気持ちを尊重し、簡単な作業をお願いしたり、役割を作ることで落ち着くケースも少なくありません。
■ 家族が注意すべきポイント
- 叱責や否定は避け、穏やかに受け止める
- 本人のペースに合わせ、焦らず対応する
- 夜間外出が多い場合は、医師に相談して睡眠環境を整える
- 施設やデイサービスを活用して、介護者の負担を軽減する
「徘徊を止める」よりも、「安心して歩ける環境を整える」ことが大切です。
そのためには、在宅介護だけでなく、外部のサービスを上手に使うことも重要です。
■ ご家族へのメッセージ
徘徊は「わがまま」や「困った行動」ではなく、脳の変化による症状です。
本人も不安や混乱の中で動いており、決して悪気があるわけではありません。
だからこそ、介護者が冷静に受け止め、安心できる声かけや環境づくりを行うことが重要です。
また、家族だけで抱え込まず、地域包括支援センター・ケアマネジャー・主治医などに相談し、サポートを受けながら対応していきましょう。
徘徊を完全に防ぐことは難しくても、「安全に・穏やかに過ごせる工夫」で、家族と本人の負担を軽くすることは可能です。
■ まとめ
認知症に伴う徘徊は、家族にとって大きな不安のひとつですが、
安全対策・活動量の調整・地域連携をうまく組み合わせることで、リスクを最小限に抑えられます。
「止める介護」ではなく、「安心して過ごせる介護」へ。
それが、本人の尊厳を守ると同時に、介護者の心を守る第一歩です。
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