サービスを「断られる」ことってあるの?
訪問介護での対応NG例とよくある誤解【現役介護主任が解説】
はじめに
「介護サービスって、申請さえすれば必ず使えるもの」と思っていませんか?
実は、訪問介護などの在宅サービスでも利用をお断りされるケースがあります。
介護保険はあくまで「できることが決まっている制度」なので、すべての要望に応えられるわけではありません。
今回は、介護歴20年の現役介護主任である私が、訪問介護の「断られるケース」と「誤解されやすいポイント」、そして「代替の解決策」について詳しく解説します。
1. 訪問介護が「断られる」主な理由
訪問介護事業所は、どんな依頼でも引き受けられるわけではありません。
介護職員の資格や体制、安全確保の観点から、サービス提供が難しいと判断される場合があります。代表的な例を見ていきましょう。
(1)医療行為が必要なケース
介護職員は医療職ではないため、医療行為は行えません。
例えば、次のような行為は訪問介護ではNGです。
- インスリン注射や点滴の管理
- 褥瘡(じょくそう)や創傷の処置
- 胃ろう・カテーテルの管理
これらは訪問看護の範囲になります。
介護と看護を併用することで、安全に自宅生活を続けることが可能になります。
(2)危険を伴う環境・衛生状態
職員の安全が確保できない環境では、訪問をお断りすることがあります。
例えば、床が見えないほどのゴミ屋敷や、ペットの多頭飼育で衛生環境が極端に悪い場合などです。
また、利用者や家族から暴言・暴力がある場合も、事業所は職員を守るために契約を解除せざるを得ません。
(3)契約外・制度外の作業を求められる
介護保険では「利用者本人の生活支援」に限られます。
そのため、以下のような内容は生活援助の対象外となり、断られることがあります。
- 家族全員分の食事を作る
- 庭の草むしりや車の洗車
- 年末の大掃除や窓ふき
- 買い物のついでに家族の分まで購入
これらは「介護保険ではない自費サービス」での対応となります。
(4)本人の強い拒否
認知症などで介助を嫌がる場合、無理に介護を行うことはできません。
繰り返し拒否があると、事業所としては「サービスが成立しない」と判断され、契約を見直すことになります。
このようなケースでは、ケアマネジャーを通じて他の支援方法を検討することが大切です。
2. 「お金を払っているのにやってくれない」の誤解
介護の現場でよく聞く言葉が、「お金を払っているのに、なぜやってくれないの?」というもの。
しかし、介護保険制度は「できる範囲が法律で決まっている」ため、支払額に関係なく内容を超えることはできません。
これは職員の怠慢ではなく、制度上の制約によるものです。
訪問介護の「生活援助」で認められているのは、主に以下のような家事です。
- 利用者本人の食事作り
- 本人の衣類の洗濯
- 部屋の掃除(本人の生活スペースに限る)
- 買い物(本人の日用品・食材のみ)
つまり、家族や同居人のための家事は対象外です。
これを理解しておくことで、「断られた」という不満を避けることができます。
3. サービスを断られたときの対処法
「利用を断られた」と聞くとショックを受けるかもしれませんが、代替策はたくさんあります。
大切なのは、すぐに諦めずに専門職に相談することです。
(1)ケアマネジャーに相談する
まずはケアマネジャーに事情を説明し、別の事業所やサービスを紹介してもらいましょう。
事業所によって人員体制や方針が異なるため、同じ依頼でも対応してもらえるケースがあります。
(2)訪問看護や他職種の利用
医療行為が必要な場合は、訪問看護との併用が効果的です。
また、福祉用具レンタルや訪問リハビリを組み合わせることで、在宅生活を継続できることもあります。
(3)自費サービスを活用する
「掃除をもっとしてほしい」「家族の分もお願いしたい」など、介護保険でできないことは自費サービスで補えます。
最近では、介護職員が運営する自費サービスも増えており、安全かつ柔軟に利用できます。
4. 「断られる前」にできる準備
実は、介護サービスをスムーズに利用できるかどうかは、事前の準備と伝え方が大きく影響します。
現場で「トラブルになりやすい依頼」と「円滑に通る依頼」の違いをまとめました。
(1)要望を“お願い”の形で伝える
「やってもらって当然」ではなく、「できる範囲でお願いしたい」という伝え方が効果的です。
介護職員は制度の範囲内で最大限努力してくれます。信頼関係を築くことが、結果的にサポートの幅を広げるポイントです。
(2)家族と本人の希望を整理する
家族が望むことと、本人が望むことが食い違っているケースは多く見られます。
本人の意向を中心にまとめておくと、ケアマネジャーが適切なプランを立てやすくなります。
(3)必要な情報を正確に伝える
病状や服薬、家庭の状況を正確に伝えることも大切です。
特に医療的ケアが必要な場合や行動面の注意点は、あらかじめ共有しておくとスムーズです。
5. 自費サービスを上手に組み合わせる
介護保険では対応できない部分を補うために、自費サービスを上手に組み合わせるのがおすすめです。
例えば、以下のようなサービスがあります。
- 家事代行(掃除・洗濯・料理など)
- 買い物代行や外出付き添い
- 見守り・話し相手サービス
- 病院付き添いや送迎
まとめ
訪問介護で「断られる」というのは、利用者を拒絶しているわけではありません。
それは、制度と安全の範囲内で最適な支援を行うための判断です。
できないことがあっても、ケアマネジャーや他職種、自費サービスなどを組み合わせることで、多くの問題は解決できます。
大切なのは、「断られた=終わり」ではなく、「どうすればできるか」を一緒に考える姿勢です。
現場の職員も、あなたやご家族の生活を支えたい気持ちは同じ。
チームで支え合いながら、より良い在宅介護を目指していきましょう。
この記事は、現役介護主任・みしょの介護記録が執筆しています。
介護のリアルを“わかりやすく・現場目線”でお届けします。


コメント