ケアマネジャーって何?|家族が知っておきたい役割と上手な付き合い方
介護が必要になったときに「ケアマネジャー(ケアマネ)」という言葉を耳にすることが多いと思います。けれども、実際にどんなことをしてくれる人なのか、どうやって頼ればいいのか分からない方も少なくありません。この記事はご家族や介護に関わる方が、ケアマネとの関係をスムーズに作れるよう、現役介護職の視点で具体的に解説します。
はじめに:ケアマネに頼ると、どれだけラクになるの?
介護は本人の体のケアだけでなく、生活全体を整える必要が出てきます。医療・福祉・住まい・制度手続き…関係することが多く、家族だけで対応しきれない場面が必ず出てきます。そこで力になるのがケアマネジャーです。ケアマネは「介護サービスの設計者・調整役」として、あなたの負担をぐっと軽くしてくれます。
ケアマネジャーとは? ひとことで言えば「生活のコーディネーター」
ケアマネジャーは介護支援専門員という正式名称を持ち、介護保険制度に基づいてケアプランを作成し、サービス調整を行う専門職です。医師のように治療をするわけではありませんが、
- 本人・家族の希望を聞き取り、
- 利用可能なサービスを組み合わせて計画を作り、
- サービス事業者との連絡・調整を代行し、
- 状況変化に応じてプランを見直します。
「医療(体)」の専門家が治療に当たるなら、ケアマネは「暮らし(生活)」の専門家です。
ケアマネが具体的にしてくれること(できるだけ分かりやすく)
1)必要なサービスを一緒に考えてくれる
「デイサービスに通った方がいい?」「訪問介護をどれくらい頼めばいい?」など、家族だけでは判断が難しい項目を一緒に整理してくれます。生活の優先順位(安全、栄養、排泄、居室環境など)を踏まえて、実情に沿った提案をしてくれるのが強みです。
2)ケアプラン(介護計画)の作成
介護保険を利用するには「ケアプラン」が必要です。ケアマネは、本人の状態や希望を聞き取り、サービスの頻度や種類、担当事業者まで具体的に落とし込んだ計画書を作成します。プランは「単なる紙」ではなく、日々の生活を支える設計図です。
3)サービス事業所との調整・紹介
訪問介護(ヘルパー)、デイサービス、福祉用具貸与、訪問看護など、多くの事業所と連絡調整を行います。「どの事業所が合いそうか」「まずは体験利用してみる」「トラブル時の連絡窓口」を代理で動いてくれるため、家族の手間が大幅に減ります。
4)モニタリングとプランの見直し
介護は“静止した状態”ではなく、良くなったり悪くなったりします。ケアマネは定期的に状況を確認(モニタリング)し、必要があればプランの変更や関係機関への連絡を行います。実務上は月1回の訪問や電話相談が一般的ですが、状況次第で臨機応変に対応してくれます。
ケアマネに相談するときのポイント(準備と伝え方)
相談の質は、事前の準備で大きく変わります。以下のポイントを押さえると、より的確な支援につながります。
- 日常の困りごとを具体的に書き出す:「いつ」「どこで」「何が困っているか」をメモしておくと説明が楽です。
- 生活の優先順位を伝える:安全第一か、できるだけ自立を保ちたいか、家族の負担軽減を優先したいかなど、目標を共有しましょう。
- 過去の受診歴や転倒歴を整理:診療情報や薬の一覧、受診日、転倒の頻度などがあるとプランに反映されやすいです。
- 家族の関係や支援可能時間を明示:家族が働いている時間帯、手伝えること・できないことを伝えてください。
- 不安や希望は隠さず伝える:「費用が心配」「施設には預けたくない」など、正直に話すほど良いプランが作れます。
ケアマネと合わない場合はどうする?(担当変更は可能です)
「相性が合わない」「連絡がつきにくい」「希望を反映してくれない」と感じたら、担当ケアマネの変更を申し出ることができます(地域包括支援センターや居宅支援事業所に相談)。変更は“悪いこと”ではありません。重要なのは、信頼できるパートナーを見つけることです。
ケアマネに頼るときのよくある誤解とその真実
- 誤解:ケアマネは全てをやってくれる
真実:ケアマネは「調整役」。医療行為や家庭の代行を全て行うわけではありません。必要なサービスを繋ぎ、家族と業者が協働できるよう支援します。 - 誤解:相談するとサービス費が高くなる
真実:ケアプランは介護保険の枠内で作られます。無駄に高額な提案をすることは基本的にありません。費用が気になる場合は遠慮なく相談を。 - 誤解:ケアマネに任せれば家族は何もしなくていい
真実:家族の協力は重要です。ケアマネがいることで家族の負担は減りますが、日々の見守りや意思決定は家族の役割が大きい場面もあります。
ケーススタディ:ケアマネがいるとどう変わる?
ケース1:外出が減って閉じこもりがちなAさん(80代)
問題点:活動が減り、筋力低下・気分低下が出てきた。家族は仕事で昼間の見守りが難しい。
ケアマネの対応:
- デイサービスの体験利用を提案し、週2回から参加スタート。
- 訪問リハビリで筋力維持プログラムを導入。
- 家族と相談して買い物代行や福祉用具(手すり)の導入を調整。
結果:外出機会が増え、生活のリズムが回復。家族の負担も分散。
ケース2:頻繁に転倒するBさん(高齢・複数薬服用)
問題点:薬の副作用や環境要因で転倒が続き、入院リスクが高い。
ケアマネの対応:
- 訪問看護と連携して薬の見直しを依頼。
- 福祉用具(滑りにくいマット、ポータブルトイレ)の導入。
- 定期的なモニタリングと家族への転倒予防教育を実施。
結果:転倒頻度が低下し、在宅での安全性が向上。
費用のこと:ケアマネ報酬と介護保険の範囲
ケアマネのサービス(ケアプラン作成・管理)は介護保険の給付範囲内で行われます。基本的には自己負担は1割(所得により2〜3割)で、ケアマネに別途高額な料金を払う必要はありません。ただし、介護保険外サービス(民間の家事代行や特別対応)は別料金となるため、その点は事前に確認が必要です。
ケアマネを上手に使うための実践テクニック(チェックリスト)
- 事前に相談したいポイントを紙にまとめておく(時間短縮&要点が伝わる)。
- 本人の「やりたいこと」「大切にしたいこと」を必ず伝える(本人主体のプラン作成)。
- サービス導入後は、1〜2か月で効果を評価する旨を伝えておく(早めの軌道修正が可能)。
- 連絡が取りにくい場合は、地域包括支援センターへ相談して代替手段を確認。
- 不安があるときは、第三者(医師・看護師・地域相談窓口)に意見を求める。
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よくあるQ&A(家族からの質問まとめ)
Q. ケアマネは何回でも変更できますか?
A. はい。事情や相性で変更することは可能です。まずは担当ケアマネに相談、それでも解決しない場合は居宅支援事業所や地域包括支援センターに申し出ましょう。
Q. ケアマネは無料で相談できますか?
A. ケアマネ業務(ケアプラン作成・モニタリング)は介護保険の給付対象であり、原則自己負担は給付割合に含まれます。初回相談や簡単な相談は無料で対応する事業所も多いですが、訪問回数や事務的作業が増える場合は費用範囲の確認を。
Q. ケアマネに何を聞けばいいか分かりません。
A. 「不安なこと」「困っていること」「やってみたいこと」を素直に伝えるだけで大丈夫です。生活の大小を問わず、まずは共有することがスタートです。
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まとめ:ケアマネは「ひとりで頑張らないための味方」です
ケアマネジャーは専門知識を持ちながら、家族と一緒に「暮らしを整える」役割を持った心強いパートナーです。初めてだと緊張するかもしれませんが、小さな悩みでも相談することで、具体的な一歩が見えてきます。
「何から手を付ければいいか分からない」――そんなときこそ、ケアマネに頼ってください。あなたが一人で抱え込む必要はありません。まずは連絡を取ってみることが、介護生活をラクにする第一歩です。


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