“ご高齢のお母さん”のことで責められた…訪問家族のリアル対応術
〜家族との板挟みで悩むあなたへ〜
はじめに
「なんで母がこんなことに…ちゃんと見てくれてるんですか?」
「こんなに痩せたの、施設のせいじゃないですよね?」
介護現場に身を置くと、ご家族からこうした厳しい言葉を投げかけられる瞬間があります。
どれだけ誠実に向き合っても、突然の“責められる言葉”に心が折れそうになる――これは、多くの介護職員が経験していることです。
この記事では、家族の心理を理解しつつ、現場で実際に使える「リアル対応術」をお伝えします。さらに、職員自身の心を守る工夫や、外部サービス・制度を活用したストレス軽減方法についても具体的に解説します。
1. 家族は“不安”から言葉が強くなる
まず理解しておきたいのは、「責められる=嫌われている」ではないということです。
ご家族の強い言葉の背景には、必ず不安や葛藤があります。
- 毎日会えないことへのもどかしさ
- 施設に任せてしまっているという罪悪感
- 変わりゆく親の姿への悲しみやショック
こうした感情が混ざり合い、矛先が「介護職員」に向かってしまうのです。
だからこそ、表面的な言葉だけに反応するのではなく、その裏にある“気持ち”を読み取る姿勢が大切です。
2. 反論より“共感の一言”が効く
厳しい言葉を受けると、思わず反論したくなるのは自然なことです。
しかしそこで正面から受け止めてしまうと、かえって関係は悪化しやすくなります。
まずは共感のひとことを返すのが有効です。
例:
- 「そうお感じになるの、本当によくわかります」
- 「ご心配な気持ち、すごく伝わってきます」
一見シンプルですが、「気持ちを理解してくれている」と感じたご家族は、少しずつ声のトーンを落とし、話を聞く姿勢に変わっていくことが多いです。
大切なのは、相手の不安を受け止めた上で、必要な情報を冷静に伝えることです。
3. 情報共有は“見える化”がカギ
ご家族の不安を減らす最大の方法は、「よくわからない」という感覚を減らすことです。
そのために有効なのが見える化です。
- 連絡ノートでの日常報告
- 定期的な写真や動画の共有
- ケア内容や栄養状態をグラフ化して見せる
「先日、こんな風に笑っていらっしゃいましたよ」
「体重は少し減りましたが、食事の量は安定しています」
具体的な記録やエピソードを示すことで、ご家族は「ちゃんと見てもらえている」と安心しやすくなります。
4. 職員の“こころの守り方”も忘れずに
ご家族の言葉は、時に職員の心を深く傷つけます。
大切なのは「それはあなたの責任ではない」と理解することです。
そのうえで、職場内で気持ちを共有する習慣を持つことが有効です。
例:
- カンファレンスで「最近の家族対応で感じたこと」を共有
- 同僚同士での声かけ「大変だったね」「よく頑張ったよ」
- 上司や相談員にバトンタッチする勇気を持つ
介護職員も人間です。
「きつかった」と言える環境が、心のバランスを保ち、長く働き続けるための支えになります。
5. ケース別対応術
① 理不尽に責められる場合
事実と異なる指摘を受けることもあります。
そんな時は、すぐに反論せず「一度確認します」とワンクッションを置きましょう。
冷静なデータや第三者(看護師・ケアマネ)の説明が入ると、感情的な言葉は落ち着くことが多いです。
② 同じクレームが繰り返される場合
「何度説明しても納得してもらえない…」というケースでは、職員個人で抱えず、チーム対応に切り替えることが重要です。
複数人で一貫した説明をすることで、ご家族も受け止めやすくなります。
③ 苦手なご家族がいる場合
相性の問題で、どうしても心が消耗する家族も存在します。
その際は、無理に自分だけで背負わず、役割を分担しましょう。
「〇〇さんはAさんのご家族担当、私は別の方を」と調整できると、職員全体のストレスも減ります。
6. 外部サービス・制度を活用する
家族対応で疲弊したときは、現場の工夫だけでなく外部の力を借りることも有効です。
- ケアマネジャーを通じた説明・調整
- 相談員を介したクレーム対応
- 必要に応じて家事代行・外部支援を提案
例えば、「ご自宅でのケアが不安」という声には、家事代行サービスを紹介するのも一つの方法です。
家庭での介護負担を減らすことが、ご家族のストレス軽減につながります。
7. 介護職員自身が限界を感じたら
家族対応は介護の大切な仕事の一部ですが、どうしても合わないと感じることもあります。
そんな時は「職場環境を見直す」という選択肢も必要です。
人間関係や施設の方針によって、家族対応の負担は大きく変わります。
「今の職場では心が持たない」と思ったら、転職を考えることも自分を守る一歩です。
まとめ
介護職員は、ご利用者だけでなく、ご家族とも信頼関係を築くプロです。
だからこそ、ご家族からの厳しい言葉に心が折れそうになるのは自然なこと。
大切なのは、
- 言葉の裏にある不安を理解すること
- 共感をベースに会話を進めること
- チームや外部の力を借りて抱え込まないこと
そして何より、自分自身の心を守りながら働き続けることです。
「完璧に応える必要はない」と知ることが、介護を続ける力につながります。
おまけ:現場で使える“ねぎらいの言葉”
- 「〇〇さん、昨日の対応すごく助かりました!」
- 「家族対応きつかったよね、少し休もうか」
- 「あのご家族、心配性なだけだから無理しないで」
こんな声かけが、現場の空気を和らげ、支え合えるチームを作ります。


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